ブルース・スプリングスティーン--ジャングルランド
昨夜遅く
陸軍レンジャーがハーレムに帰省
マジック・ラットはイカしたマシンに乗って
ニュージャージーの州境を越えた
ダッジのボンネットに座る裸足の娘
夏のしとしと降る雨の中
生ぬるいビールを飲みながら
車で町に入ったラットはズボンの裾を捲り上げる
二人は悶々として
フラミンゴ通りに姿を消す
法執行の頂点にある奴がフラミンゴ通りを駆け抜けて
ラットと裸足の娘を追いかける
この辺の輩は影みたいにいつも物静か
教会から監獄までも手をつないでる
今夜、世界は静まりかえっている
俺達がジャングルランドに身を置く中
深夜族が集まって
今夜のたまり場を選んだ
この平凡な街を照らしてる
巨大なエクソンのネオンサインの下に集合だ
高速道路の料金所でオペラ
路地裏では徹底的にバレエ
地元のお巡りやパトカーが
この聖なる夜を引き裂くまで
秘密の負債が支払われると
通りは活気に満ちる
接触がなされ、姿を見られることなく彼等は消え去る
若僧たちはギターをみせびらかす
レコード・マシンのために
遮二無二になってるスイッチ・ブレードみたいに
満たされない者、追われてる者は
ロックンロール・バンドに早変わりして
タイマンを張るんだ
ジャングルランドの通りで
駐車場では夢想家たちが
流行ものを身にまとってる
裏通りでは
DJがかけるレコードで女の子たちが踊ってる
孤独な心の恋人達は薄暗い隅っこで苦戦する
夜が更けるにつれて必死になり
ほんの一瞥とささやきでどこかへ消えてしまう
街の下ではふたつの鼓動が脈打っている
熱情のエンジンが
鍵のかかった寝室で優しく夜を駈ける
山の手のトンネルでの
やわらかな拒絶のささやき、そして降伏
ラット自身の夢が彼を撃ち殺す
夜銃声が玄関にこだまする
救急車が発車するときも
その娘が寝室の灯りを消すときも
誰も見ていない
外では本当の死のワルツの中で
通りは燃えている
肉体と幻想の狭間で
この辺の詩人は何も書きやしない
袖手傍観するだけ
夜が突き進む中、彼らは絶頂を求める
誠実な抵抗を試みるが
怪我するだけ、死ぬことはない
今夜、ジャングルランドで
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